アメリカの会社#4

アメリカ全土の会社を見たわけではありませんが、アメリカの特に技術系の会社などは、仕事の役割がはっきりと分担されています。 掃除やごみ捨てもそれだけを担当する人が居るので、日本の多くの企業のようにみんなで週末掃除と言うこともありません。 事務手続きはすべて秘書が行ってくれますので、自分の専門の仕事以外はほとんどする必要もありません。 
 分析をしたい場合でも、SEM、TEMなど、電子顕微鏡や手軽な分析装置は、日本では技術者本人が使うことが普通ですが、アメリカではそれぞれのスペシャリストがいて、装置もその人専用になっているため勝手には使えません。 TEM技術者のJimは耳が不自由だったため、いつも筆談で打合せを行いました。 結構Jimとは仲良くなりとても良い経験でしたね。
 ある日地下室にSEM装置が一台、管理者も無く放置されているのを発見。 SEM依頼が増えてなかなか観察の順番が周ってこないため、SEM技術主任のKevinに許可を受けて、自分の観察は真っ暗な地下室でひっそりと行っていました。 管理者が居なくなった装置が放置されているのもアメリカの会社の特徴ですね。 地下室のため、いつも時間を忘れて仕事をしてしまい、部屋に戻ると誰も居ないことも良くありました。
 アメリカの会社ではプライベート空間が確保されていて、日本のような大部屋の居室と言うのは珍しいです。 我々管理職以上では1〜3人程度の個室。 テクニシャン(実験担当者)も、装置の横などに個人のスペースとPC,電話など用意されています。 時には廊下や地下にパーティションで区切って個人スペースを設けてあることもありました。 日本人が始めて見ると不思議な光景です。
 開発職と言っても、我々は直接実験をすることは少なく、実験計画を立てて現場のテクニシャンに説明し実験を行ってもらいます。 手作業の実験は日本人の方が器用なので自分でやることもありましたが・・。 実験結果を考察し、報告書にまとめて戦略を練るのが我々の主な仕事になります。 テクニシャンが2交代・3交代制などの場合は、時間になると実験説明したテクニシャンが帰ってしまうので、引継ぎの人にも説明する必要があり、自分で出来れば楽だなと思う時もありましたね。
 避難訓練なども機械的で3交代の人のために朝7時、午後2時、夜6時の3回行われました。 その日は早朝から出勤していたので、一日に3回避難訓練をした覚えがあります。 特に点呼を取るわけでもなく、社員、お客かまわず全員を一度避難させるというもので、いつもは人も来ない地下室まで担当者が避難の呼びかけに来ましたからね。
 室内は完全禁煙。 喫煙場所はすべて外なのですが、マイナス10度の屋外で半袖でタバコを吸っている人も良く見かけました。 アメリカの家や会社は気密構造なので室内は冬でも半袖で生活しているため、そのままの格好で外に出てしまう人も良く見かけます。 真冬の寒い日にタンクトップでごみ捨てに来る女性もアパートでは見ましたよ。
 ほとんどのことはアメリカの会社では自由なのですが、社内に個人のPCやカメラを持ち込むことは厳しく禁止されています。 それを違反するだけで首になるケースもあるようです。
 当時は、ITバブルが崩壊して景気が低迷した時代でしたので、一年で3回の大きなレイオフ(解雇)を経験しました。その度に同僚がどんどん減っていくのは寂しい気分でした。仕事の中心になって働いていた人でさえ解雇されることもあり、厳しい世界だなと感じました。 家を買って1ヶ月しかたっていないのに解雇と言う人もいました。 その後解雇された彼は、フィリップスに入社して契約金が数百万だったとも聞きました。 解雇されても大きなチャンスにめぐり合えるのもアメリカの特徴です。